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音楽と本と日本語の練習

映画『聲の形』感想

映画『聲の形』がめちゃくちゃ素晴らしかったので、適当に感想を書いていく。

koenokatachi-movie.com

 

1日が入場料1000円の日だったので、公開から1ヶ月半経ってようやく観賞した。原作は未読。面白いらしいというので良い暇つぶしになればいいと思い、劇場へ向かった。しかし、それは予想外の大正解だった。まずOPがTHE WHO の"My Generation"で高揚感MAXになり、硝子役の早見沙織さんをはじめとする役者陣の高い演技力、牛尾憲輔さんの劇伴やサウンドエフェクトに驚かされた。また、イジメ、障害、コミュニケーションの壁、罪と罰といった重いテーマが扱われていたことで、鑑賞中にいろいろなものが胸に突き刺さってきた。観終わってしばらく経ったが、未だに心のなかに様々な考えが渦巻いている。これをなんとか言葉にしたいと思い記事を書くことにした。正直なめてたよ・・・山田尚子監督あんたすげえよ・・・

 

山田尚子さんの監督作品といえば『けいおん!』や『たまこまーけっと』だが、僕はどちらもあまり楽しめず、3話くらい観てドロップアウトしてしまった。シリーズ演出をされている『響け!ユーフォニアム』は、僕が吹奏楽経験者ということもあって1期2期どちらもかなりドハマリしている(デカリボン先輩かわいいよ)。この『聲の形』を観に行った理由の1つは「響け!」の演出に関する記事を色々読んで、山田尚子さんに興味を持ったからというのもある。

 

鑑賞者のバックグラウンドを反映する作品

ネット上では『聲の形』は感動ポルノだ!論が巻き起こっているなど、かなり賛否両論が別れているようだ。

togetter.com

僕はそうは思わなかったが、そう思われても仕方ない一面も確かにあったと感じる。将也と硝子の再会シーンや告白シーンなど、全体的にそれぞれのキャラの心情や断片的に示されている映像を読み取ることが要求されているので、様々な記事で指摘されているように、鑑賞者のバックグラウンドが大きく反映されてしまった結果、このような議論が起こっているのだろう。硝子の聴覚障害に関しては、あくまでもコミュニケーションの壁を表すためのギミックだと思うので、ごちゃごちゃ言うのは野暮ったいと感じる。ドラマのオレンジデイズもヒロインが聴覚障害もちだったし(内容は全然覚えてない・・・)

 

僕がこの映画を素晴らしいと思ったのも、僕のバックグラウンドが反映された結果だと思う。僕も小学生の時は、将也のようにクラスの女の子に嫌がらせをしたり、物を隠したりすることで楽しんでいた。心のなかでは「ちょっとやりすぎちゃったかなー・・・」とは思っても、クラス内、友達間の空気に飲まれ、結局は友達と楽しむ方が勝ってしまった。でも被害を受けた子は、今でもそれが心の傷になっているかもしれない。

その後、中学校に上がった僕は、クラス替えで仲のいい友達のいないクラスに配属されてしまい、クラスにうまく馴染めず孤立してしまった。その時初めて、自分は人とコミュニケーションをとることが苦手なのだと気づいた。イジメには合わずにすんだが、やはりクラスで浮いた存在だったので、からかいの対称になることもしばしばあった。それからはなんだか人の顔が見れなかったり、自分がどう思われているか気になって仕方なかった。そういったことから、将也の気持ちはわかるような気がした。

 

川井みき、このキャラが作中で最も印象に残った。亜麻色の髪にメガネというビジュアルが僕のどストライクだったということもあるが、彼女の振る舞いにはかなりイライラした。おそらく鑑賞者のヘイトを最も集めていることだと思う。自分を正当化し、人を乏しめようとするような、客観的に見るとかなり嫌なやつだが、こういう人は現実でも多くいるだろうし、僕自身も、そして誰もがそういった側面を持っている。そのために嫌悪感を持ってしまうのだろう。

 

誰もが被害者にもなり得、加害者にもなり得る。ただ傍観者になることしかできないこともある。しかしその経験、その時の気持ちをどう活かしていくかということが重要なのではないか。そんなことを思った。

 

劇伴について

LAMAやソロユニットのagraph電気グルーヴのサポート、アニメ『ピンポン』の劇伴など多方面で活躍中の牛尾憲輔さんの音楽が、この映画に彩りを与えていた。下の記事でも書かれているようにホワイトノイズなどの電子音に加え、アップライトピアノ内の弦を叩くハンマーの音、ピアノ椅子の軋む音といったアナログノイズを多様に用いていた。このノイズがキャラクターの心情を描き、生々しさを与え、そして硝子の補聴器を通して聞こえてくる世界を表していた。アルバム単体で聴いても素晴らしいアンビエントミュージックである。なるべくいいオーディオ機器で聴きたい。

getnews.jp

 

ところでこれ、文科省とタイアップしてるんですね。最近お役所も結構柔軟ですね。

www.mext.go.jp

 中高生にとっては、扱ってるテーマがかなり身近なものなので、色々なことを考えるいいきっかけになるだろう。今年はパラリンピックも開催され、選手たちにも注目が集まった。そんなこともあって、この年に観れて本当に良かった。まさに今の時代に必要とされる、というと大げさすぎるかもしれないが、多様性を受け入れる「寛容さ」が求められる今だからこそ多くの人が観るべきではないかと思う。そう、これは「俺達の時代」の話なんだ。

youtu.be